霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

お墓の素材、石について

2014年04月15日

 諸外国を回って、まずなによりも感じることは、お墓はその国の文化・宗教を表現しているということです。そして、大変「美しい」のです。
 お墓の材料・素材も、なにがなんでも石とは限りません。ヨーロッパでは、土葬が主の国において(イタリア、オーストリア等)、土葬地に埋めた遺体の頭上に、木の十字架を建ててあります。10年たって掘り返し、壁型墓地や、素敵な墓石を建立するまでの「墓標」だったりするのです。
 日本でも、かつて木製の墓標が多く用いられました。また、お墓のシンボルを樹木としたお墓が、北欧などでは見られます。自然を意識した演出ですね。そのほか石と木の組み合わせ、石とブロンズの彫刻の組み合わせ、石とガラス、陶器のデザインが欧米も墓地ではよく目にする素材なのです。

 家族墓であっても、個人墓であっても、あるいは合葬式の共同墓、永代供養墓にしても、その素材として、世界中の人々に太古から現在に至る人類の歴史の中で共通に使われている素材は、なんといっても「石」なのです。
 世界的に有名だった日本人の血を引く彫刻家、イサム・ノグチ氏が、「石は地球そのものだ」と言われた言葉が実に重みを増しています。石はマグマが固まってできた自然素材です。地球のいとなみの中で、人間も石も"いのち"をもっているのです。

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 また石は、碑文を刻むという側面では、"永遠"に近い耐久性を有する素材でもあり、人類は「記録」のために古くから石を使用してきたのです。大英博物館所蔵の、ロゼッタストーンに触れた時、そのことを実感しました。石器時代から、人間が手を加え、生活と信仰の素材として使い続けている石という魅力をもつものがおもしろいのです。「石は生きている」なんてお話すると、不思議に思われるでしょうが、石は水を吸い、吐いています。呼吸しているようなものです。時を経る中で風化をしていきますが、自然素材なので、実に環境になじんでくるのです。苔むした灯篭が日本庭園に合うのも、時間の経過が、自然同士の調和を生むからです。
 近年、環境という言葉がキーワードとなり、環境保護が叫ばれる中で、石が見直されています。河川の堤や、護岸工事に大量のコンクリートが使用されてきましたが、実は魚が卵を産み付けなくなってしまいました。石であれば、魚は卵を産むそうです。不思議ですね。自然保護を考える人たちから、石と採るのが自然破壊と、よく耳にします。しかし、人類はその自然素材を、生活に十分役立ててきたのです。そうであるなら、自然からいただいた恵みを、十分に無駄なく使い切ってあげることこそ、本当は大切なのではないでしょうか。

 さて、次回は、墓石に多く使われる石材の特徴について、ポイントを書いていきましょう。

profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子