少子化とシングル化がもたらすものは?
1970年代後半に、女性が一生に産む子供の数を示した、合計特殊出生率が、2.0を切ってから、少子化は深刻化しています。人口が減らない目安は、2.09人といわれていますが、1980年代に1.54を切り、厚生省自身も声を大にして「少子化の危険」を叫んでいます。しかし改善されるどころか、いまや1.4台にまで落ちています。少子化は、労働力、高齢化社会の福祉の税負担といった経済の側面でよく政治家や行政が問題視しているものです。
一方で、少子化は、家族単位で継承しているお墓の未来を根底から崩すものになりかねません。少子化の原因はひと口にはいえませんが、結婚適齢期の長期化、30歳代のシングル化傾向、高齢出産の増加がその原因のいくつかに入るでしょう。
昭和20年代、30年代に生まれた核家族の子供たちは、兄弟2~3人が平均です。2人の姉妹の場合、戦後生まれの私たちは「家を継ぐ」ことだけにとらわれず、他家に嫁ぐことを幸運にも親に許された世代でもあります。当然ながら長男、長女の結婚、女の子が一人っ子でも姓が変わる結婚をしているわけです。戦前の家制度の下では、他家に嫁したら実家のお墓が絶えてもしかたがない、という意識が当然だったと思います。
しかし、戦後の民主教育、男女平等教育を受けた団塊世代、ポスト団塊世代の女性たちの中にはそう考えない人たちも多いのです。実家の墓を無縁化させない方法のひとつに、「両家墓」という方法があります。両家墓とは、男性側(夫側)と女性側(妻側)の墓を、ひとつにしてしまうことで、石碑に、両家の名前を刻むやり方が一般的です。ただし、これでは、その次の世代には通用しない可能性があります。次世代は、A家でもB家でもなく、C家といった名前に変わらないとも限りません。つまり少子化は、家単位で守り継承してきた墓のあり方を根本から変え、合祀する形の墓に変えないとも限らないわけです。
また、シングルの増加はどうでしょうか。30代の女性がローンを組み、親元から離れマンションを買う、そんな現象が新聞にとりあげられたのは、90年代に入ってからです。女性の高学歴化や、かつての専業主婦幸福神話の崩壊と、共生社会のパートナーシップを保てる男性選びによって、結婚に魅力はあるが、女性が結婚しにくい状況になっていることが、シングル化を高めています。
また別の面では、日本の場合、男女とも結婚までは両親と同居が原則となっている社会では、両親の過保護が裏にあるシングル化なのかもしれません。男性の30代、40代のシングル増加は、世にいうマザコン現象なのかもしれず、かえって大問題でしょう。
さて、男女ともに生涯シングルであったとすると、両親の墓に入るのでしょうか。独立心旺盛なシングルは、自分の生涯を示すメッセージを刻んだ個人墓に入るか、永代供養墓に合葬される保障を選ぶか、大海原のロマンに憧れ散骨を選択するのか、選択肢がたくさんあるいまです。血縁による家墓を選ばず、友縁の墓に入るかもしれません。シングルの増加が、お墓の承継システムに影響を与えざるをえなくなるのは、あと30年後でしょう。