霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

後世に平和の大切さを伝える
ハワイ編その2~国立太平洋戦没者墓地を訪ねて

2011年01月11日

 12月23日、2番目に訪れたのは、ワイキキから車で1時間、カネアにあるValley of the Temple Cemetery(谷の寺霊園)です。この霊園には、日本移民100年を記念して1968年に建立した、宇治の平等院が再現されていることで有名です。アメリカ人の観光客には、大人気の観光スポットです。日本庭園もあり、錦鯉が池を泳いでいます。阿彌陀信仰の仏像も、平等院の中に安置されています。

 この霊園には、2度目の訪問です。最初の訪問は、1992年でした。その時との差を3点あげてみると、お墓は、人々に安らぎを感じさせることの出来る場所であることが、わかります。

  1. 平等院の拝観料は、昔は無料だったが、現在は、3ドルと有料になっていました。アメリカ人を乗せた観光客のバスもとまっていました。上の階は立ち入り禁止でした。(確か納骨堂になっていたはずです。)ビジネスの国、アメリカ的な話ですが、霊園を訪れる人々に、お寺が安らぎと癒しを与えているのです。
  2. カトリック用墓地、日本人墓地、中国系の墓地と、民族単位で日系人の墓に両家墓が見られました。それぞれの宗教に対して、配慮するエリアに分かれている。人種のるつぼ(Melting pot)でなく、正にサラダボールです。特に中国系の墓地に墓参客が多かった。
  3. 前回、フィリピンを追われたマルコス大統領が死後、遺体を冷蔵保存(エンバーミングの上)し、警備員が24時間守っていた特別な別棟がありました。しかし、今回は、故国に遺体が移ったので、今はその場所がなくなっていました。時代を感じさせました。

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 この、2つの霊園を案内してくれたベトナム人のタクシードライバー、ラワンさんの叔父さんがこの霊園に埋葬されていると話してくれました。昭和23年生まれのラワンさんは、ベトナム戦争中にアメリカへ逃れたベトナム人であり、現在アメリカに在住している100万人のベトナム人の1人です。カネアの家を案内されたのですが20人のベトナム家族で一緒に生活をしています。

 農場では、ビンロウをを台湾に輸出するために育て、葉を女性達がきれいに丁寧に洗って、ダンボールにつめていました。実も輸出します。台湾、台北市内の道端で売られているビンロウ(葉をかんでガムのように楽しむもの)が、何んとハワイ州に移民しているベトナム人によって栽培されているとは思いもよらないと思いました。

 故国をボートピープルとして脱出後、アメリカの地で死亡した叔父の墓に毎朝タクシー勤務に着く前に墓参するラワンさん。墓地は、故郷に帰れない人々にとっても「家族の絆」の確認の場所でもありました。

profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子