霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

後世に平和の大切さを伝える
ハワイ編その1~国立太平洋戦没者墓地を訪ねて

2010年12月29日

 12月22日から、クリスマスシーズンのハワイに滞在しました。目的は、ハワイのお墓の研究です。クリスマスシーズンは、アメリカ人にとって、日本人の「お正月」に近いほど「家族の絆」を確認する、大切な「家族ですごす休日」でもあります。

 12月23日午前9時30分、ホノルルの中心からタクシーで約20分に存在するパンチボウル国立太平洋戦没者墓地へ急ぎました。パンチボウルとは、すり鉢状のくぼ地に約3万人の第二次大戦および一部ベトナム戦争の戦没者(軍人、軍属)が埋葬されている自然豊かなやすらぎの墓地です。私にとっては、3回目の訪問です。最初は、1972年19歳の時、1986年の33歳の時、そして今年2010年57歳です。墓地は、人間にとって人生の過ごし方によって違って見えると思います。より深い所が見え、感じられるようになる不思議な祭祀施設です。

 ビジターセンターは無人で、太平洋戦争(パールハーバーを含む)に関する展示物があり、特に二世として参戦した二世部隊の方々の写真が飾られていました。また、2つのコンピュータ画面にむかい、名前を示すと広い墓地の埋葬場所が提示され、プリントアウトされます。園内が広いので墓参する方々を大切にするシステムです。土葬墓地、火葬墓地、エリアごとに分かれています。また入口付近の第二次大戦の戦死者のエリアには、クリスマスリースにまっ赤なリボンが付けられ、一列に並んでいるのは、実に整列した兵士のようで整然としていました。中心の女神像の巨大なモニュメントの各階段の下の巨大な壁には、太平洋戦争やベトナム戦争(海兵隊)の戦死者の名前が刻まれていました。

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 アメリカ合衆国のために命をかけて守った方々の尊い命に対して、その名を永遠に刻むことは、その方々を決して忘れないというメモリアリゼーション(記念)することの根本的な精神なのです。世界中45ヶ国、いろいろな国を訪問して、墓地を研究して来ました。多くの国で、戦死者のための墓地を見て来ました。共通して言えることは、どんな国でも、その方々を大切に考え、記念=メモリアリゼーションしていること、決して忘れないように時には一人一人の名前を石に刻んでいることなのです。それこそ、各国とも国立墓地として記念することの意味を、きちんと意志として、精神として持っているのです。後世に伝える意味です。お墓とは、そんなすごいものでもあるんですね。

 一人一人のお墓には、家族や友人から手向けられた美しい生花やクリスマスツリー、クリスマスの花であるポインセチアが飾られていました。クリスマスを前にして、人々は、日本人がお正月前に墓参するように、故人に逢いに墓地を訪ね、心を交流させ、対話する、意味深い墓参をしているのです。その思いを確認できて心が洗われました。

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profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子