死後のセーフティネットの必要性
8月11日、朝日新聞の朝刊「耕論」に、「参りなん、いざ」と題し、三人のインタビュー記事が掲載された。「千の風」の作詞者であり、芥川賞作家でもある新井満さん、世界50ヶ国の文化・芸術の偉人の墓を参り、「墓マイラー」の言葉を造語された文芸研究家カジポン・マルコ・残月さんと、何んと私の三人でした。
インタビューをして下さった、朝日新聞の太田記者は、糸井重里さんとの「婦人公論」でのお墓対談を読んで、私を探して下さったそうだ。糸井さんは、都立八柱霊園の墓石店三代目の私に"墓場のヨーコ"というあだ名を付けて下さった。(これは余談ですね)
さて、朝日の記事は、人間には追悼する場としての「お墓」の重要性について、様々な視点から話がすすんでいる。もちろんお墓は死者にとっても、生者にとっても大切なものだ。死者と生者の語らいの場であり、絆の確認の場であると共に、「癒しの場」です。
戦後、家制度から核家族化、夫婦化、個人化がすすみ、お墓も承継者(あとつぎ)を心配する、少子・高齢社会を迎えている。無縁死者数も3万2千人を数える。
無縁化した遺骨は、どうなるのだろうか。北欧の国、スウェーデンのストックホルム市では、生前所得の0.07%を埋葬税として納め、火葬代と墓地使用権を用意している。墓地は、20年などの有期限で、承継する人がいれば延長が出来、承継者なしなら返還、改葬され次の人に墓地が有効活用される。遺骨は、地方公共団体(その霊園内)で、永久に祭祀してくれる。持続可能なシステムなのです。フランスは、5年間使用可能な無縁者用の無料墓地があり、人間の"尊厳ある死"が保障されています。と言っても、皆「家族」がしっかりと、お墓を大切にメモリーの場としています。現代日本、地域力、家族力、人間関係力が希薄となっていませんか。地縁、血縁、友縁の大切さと共に、死後のセーフティネットを真剣に考え始める時期ではないでしょうか。