家族を大切にするクリスマスツリーで飾られたラスベガスのパーム霊園
2008年12月、アメリカ合衆国はオバマ大統領誕生前夜に浮かれているかと思った。しかし、1940年(昭和15年)生まれのアメリカ人の友人は、「自分が生まれてから、最悪のクリスマス」と言っていた。所はラスベガス。カジノで有名な全米一の都市だが、実は「老人天国」「シニア天国」でもある。税金が安く、ゴルフ場が多く、医療施設(メディカルセンター)も充実した「ラスベガス」を、引退後に終の住処に選ぶ人が多いのだ。そんな、年金生活のアメリカ人にも、リーマンショック後の大不況は、驚きだったようだ。
さて、そんなラスベガスの、空港寄りの葬祭総合施設であるPalm Cemetery & Funeral(アメリカでは、墓地に葬斎場や納骨堂もある)を訪れた。時はクリスマスシーズン。1980年代後半にも、ニューヨークのウッドローンセメタリーを訪れ、霊廟形式の室内墓地に、クリスマスカードやポインセチアの花々を見て、キリスト教徒の墓地は復活を待つべき場所であり、死者も生者のように扱うことは知っていた。
しかし、ラスベガス郊外のメモリアルパーク式(墓碑を建立せず、石やブロンズのフットマーカー、碑板のみの芝生墓地)の墓地には、所々に可愛らしいクリスマスツリーが植えられており、オーナメント(飾り)も美しく、所によってはイルミネーションまで行われていた。
父や母、夫や妻、娘や息子のために、家族で過ごすホームクリスマスのツリーのデコレーションが、何と墓地にまであった。風車が飾られ、「魂ある愛する人々」は、死者であっても、正に「家族」なのだ。クリスマスカードが生者に対して同様に死者にも捧げられていた。一生懸命、芝生にツリーを立てている親子や子供達の表情には、「笑顔」さえ浮かんでいた。
色とりどりのクリスマスカラーの飾りが今街中にあふれている。2009年のクリスマスに公開される、ディケンズ作の「クリスマスキャロル」にあるように、お金では家族も愛も買えはしないと感じた。日本のお正月の墓参に通じる異文化だ。