霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

ネット上は「散骨」情報花盛り!しかし、本当に大丈夫??

2009年10月28日

 「散骨」は、今や珍しい葬法ではない。インターネットのヤフーで検索すれば、約90万件以上の散骨に関する情報が出てくるからだ。
 しかし、散骨の実情については一般の人の知識は極めて少ないのが現状ではないだろうか?
 私は、1989年夏アメリカ合衆国のサンフランシスコで「散骨」を体験した。単独取材で、ネプチューンソサエティという葬祭総合会社(特に散骨に強い)に3日間訪問した。拾骨の習慣のないアメリカでは、火葬場は正にファクトリー(工場)のようで、すべての遺体は散骨されなくても粉骨(5mm以下に砕かれた砂状)になる。火葬場、納骨堂、遺骨のシッピング(郵送)まで学び、最終日にフィッシャーマンズワークのピア21から、ナイアード号に乗船。ゴールデンゲート付近で散骨する2組の家族の取材できた。海への葬送であり、大変厳かな司祭が付添う葬儀だった。ブルーの海が、遺骨のミルク色に染まる花一輪ずつを投げ入れる。家族の付添わない散骨希望の遺族を一体撒かせていただいた。

 アメリカ中が散骨天国と思われると、それは違う。いまだにキリスト教の復活思想を信ずる彼等は、75%以上土葬か霊廟形式に遺体を埋葬している。火葬が少ない上に1990年代厚生省(現厚労省)の科学研究で調査した時であっても、全米50州中散骨法がある州は、わずか7州で驚いた。ただし勿論、きちんとした散骨のルールが決まっている。土葬も半数を占め、散骨が想定すらされていなかった昭和23年に制定された「墓地・埋葬等に関する法律」を元にしたまま、散骨について何一つ決まっていない日本とは違う。

 さて、1990年代から始まった日本の散骨の実情はというと、

①散骨した方々10年間に3社で約1000件余中、多くの日本人は遺骨の一部を散骨せずに残している。(お墓に遺骨を入れている人もいる。)

②自分は散骨したいが先祖の骨までは撒けない悩みの方がいる。やむなく先祖の遺骨を永代供養墓に納めることを考えて悩んでいる人がいる。

③故人の遺志と家族の意志が50%ずつの力を持つ日本。遺言したとしても、家族が認めず散骨しない例がある。

④散骨場や散骨の島等、あまりにずさんな管理と自分勝手(撒かれる側にとって迷惑)な行動のため、条例で禁止する所(地方自治体)も出ている。

ご注意を!

 

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profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子