霊園・仏事の知っ得コラム

長江曜子連載

移葬で幸運を!―韓国のお墓事情

2010年05月31日

 現代日本では、お墓の引越し"改葬"が、大問題です。戦後、長男までが首都圏や阪神圏に、進学や就職で移動しました。そこで、結婚、家族を作り、田舎の年老いた両親がなくなると、「お墓の引越し」がにわかに身近な解決しなくてはならない大問題となるのです。どちらかと言えば、お墓の重荷が先立つ問題でもあります。

 それに引き換え、お隣りの国である韓国では、事情が違います。儒教の影響の強い韓国では、家が栄える、出世する、幸運がやって来るために、お墓を活用しています。風水師によって、お墓を建てる場所を選び「移葬」するのです。戦後の都市化という背景が同じでも、中味はいささか違っています。

 実は、ノーベル平和賞を受賞した、韓国民主化の大統領金大中氏は、「祖父のお墓を移葬してから大統領になった。」という事が、良く知られている事なのです。年長者は、この風水地理を信じている人が多いです。

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 2009年2月3日の朝鮮日報の記事には、「不況に...閏(うるう)月...移葬ブーム」というものが掲載されました。陰暦の閏月(4年に1回やって来ます。)5月(陽暦6月23日~7月21日)があるため、2009年1月29日午後、京畿道九岩山の民間霊園の移葬業者に、20余人がやって来て混み合ったとの事なのです。閏月は、"おまけの月だから何をやってもたたらない。"として、移葬や引越し等が、大盛況なのです。"おまけの月"とは、4年に1度1年が13ヶ月になることです。「息子の就職が、成就しますように」とか、「会社や家族の繁栄」、「お金持ちになれますように」という願いを、「移葬」という一大事業を苦と考えずに、積極的に前向きに考えているのです。3000基や4000基の霊園に、約1割のお墓が「移葬」されるとの事でした。

 韓国は、2000年に葬事に関する法律を全面改正、2007年に改正をし、伝統的な土葬から火葬への大改革を実施しています。その事情を、上手く活用している例でしょう。お墓で幸運を招く例ですね。

profile
長江 曜子(日本初のお墓プランナー)

死にまつわるデス・ケアサービスの葬送アドバイザー
聖徳大学教授博士(学術)
世界45カ国を旅し、お墓の比較研究をし、アメリカのお墓大学を卒業。墓石・霊園行政研究、文化人類学的視点で比較研究すると共に、個人のお墓から霊園設計・納骨堂設計等ライフプランニングのアドバザー(コーディネーター)を務める。
 また、大学においては、生涯教育(SOA)人気シリーズ「食の松戸物語」のコーディネーターを務めるとともに、寮の食事改善策を地域食材導入の試みをしている。

長江 曜子